イスに腰掛けるだけでカンタン入浴。ラクな姿勢での全身シャワーで身体への負担がかかりにくく、カラダがぽかぽかになる新しい入浴のご提案です。(在来浴室用)
みんなにやさしい、気持ち良い「座シャワー」はこうして生まれた
「あんまり大きな声では言えないけど、僕がお風呂嫌いなことがそもそものきっかけかなあ」と、当初から「座シャワー」の開発に関わってきた玉泉洋文意匠技師は笑います。
「座シャワー」の最初のアイデアが生まれた1990年は、ちょうど、若者を中心に”シャワーだけで入浴をすませる”というスタイルが定着しはじめた時代。「ラクに入れて、冬でもしっかり温まるセカンドバス」があれば喜ばれるんじゃない?と発想したのが、その後5年間に及ぶ長い開発マラソンのスタートでした。
遠かった商品化への道
「高齢の方にもやさしい」がコンセプトに当初は、若い人がお風呂がわりにさっと使うシーンが想定されていた「座シャワー」でしたが、開発プロジェクトが発足した’90年に、社内のデザイン提案展に出展したものの商品化を引き受けようという社内事業部は現れませんでした。
さらに翌’91年もデザインを改良して再チャレンジ。でも、「専門的生理データの裏付けと、商品化する上での市場性、アピールポイントが明確でない」というコメントがつけられて”継続検討”扱いに。
それまで、入浴実験を通してこの商品の”良さ”を実感していたプロジェクトスタッフは、「なんで、この良さがわかってもらえないの!」と歯がゆく思いましたが、ここであきらめはしませんでした。
この新しい商品のアピールポイントは何か?
当時は、将来の予測として「高齢化」が言われはじめたころ。年を取ってからの暮らしを快適にすることに社会の関心が向き始めたころでした。座ったまま入浴できる便利さ、快適さは、お年寄りや障害を持つ人にも、喜ばれるものなのではないか。そう考えが至ったとき、「座シャワー」の”人にやさしい、高齢の方にも安心なお風呂がわりシャワー”というコンセプトが明解になったのです。
600人の社員が入浴実験!公の機関で裏付けデータを蓄積
「座シャワー」開発の歴史は、実験の歴史でもあります。開発当初からさまざまなモデルが作られ、プロジェクトスタッフはもちろん、その他の社員までまきこんで(最終段階では、社外の関係者まで参加しました。その数、なんと600人!)入浴実験が繰り返されていましたが、「高齢の方」が対象に加わり、プロジェクトが厚生省(現:厚生労働省)の外郭団体(財)テクノエイド協会の受託研究の対象となったことで、さらに実験に拍車がかかりました。
今度は、実際にお湯の出る試作品を運び込んだ社外の機関と共同しての実験です。国立公衆衛生院では、入浴時の生理条件の変化や安全性の研究、天理大学では、高齢の方を入浴介助する場合の介護負担の研究、さらに民間の老人ホームでは、実際の使用感をモニターしてもらいました。
こうして着実にデータを収集し、そのつど改良を重ねながら、商品化への打診を続けていましたが、’94年になってもまだOKは出ません。問題は形状にありました。
ルームタイプからシャワーユニットへスタイリングを大転換
この段階まで、「座シャワー」は、小部屋の四方からシャワーが吹き出すルームタイプのものだったのですが、それではコストがかかりすぎ、商品化した場合に、価格が高くなりすぎる。浴室内に設置するシャワーユニットとして実現できないかというのが最後の課題でした。
最後の、とはいうものの、ルームタイプからシャワーユニットへの転換はなかなか容易ではありません。ルームタイプと同様に温まり、満足できる入浴感が得られるのか?高齢の方はもちろん、家族全員が満足できるのか?浴槽入浴のじゃまにならないか?浴室内で浴槽と両立できるのか?・・・いくつもの問題を解決しなければなりませんでした。
いくつもの関門をクリアしていよいよ商品化が実現
さらに何回も、実験とモニター検証が行われ、改良が加えられました。肩から足先までむらなく温めるためのノズルの配置、限られたスペースでリラックスできるための形状、裸にやさしい材質、掃除のしやすさ・・・。家族全員が満足できるか?の問題には、ペットのシャンプーにも使えるんじゃない?という名案(?)も飛び出しました。
特に苦心したのは、十分な温かさを得るためのノズルの形状です。通常のシャワーノズルでは温水の粒子が体に当った際に、反射してしまう量が意外に多く、お湯の温かさがかなり無駄になってしまうのです。また、シャワーの粒子が細かすぎると、身体に届くまでに冷えてしまい、これまたスタッフが求める”お風呂に入ったような温かさ”にはなりません。また、多少水圧が低くても、十分な水勢が保てることも条件でした。
これらの問題を解決するノズルを求めて、スタッフは、さまざまなメーカーのシャワー用ノズルはもちろん、工業用・農業用の噴霧機械のノズルまで試してみました。が、どれも思うような効果は得られません。ここまできて妥協はしたくない。ついに、ノズルまでオリジナルで作ることになってしまいました。
「座シャワー」のような商品は、どこにも前例がなく、何かを参考に、ということができません。それだけに、スタッフの苦労は並大抵ではありませんでした。
こうして’95年、ようやく自信作が完成。商品化が決定したのです。
発売早々大反響「座シャワー」はさらなる展開へ
「座シャワー」は、発表直後から、大反響を呼びました。’95年4月に開催された「バリアフリー展」に「座シャワー」が出展されると、ブースは、実演を見ようとつめかける人々で黒山の人だかりができました。
商品発売後、お客さまから座シャワーに対する心からの感謝の声を数多くいただき、ある女性スタッフは泣き出してしまいました。開発開始から5年、時には商品化できないのではないかと思いながら続けた苦労が、やっと評価いただけるようになったことに、思わず感極まってしまったのです。
「座シャワー」開発の歩みは、ここで止まったわけではありません。反響の大きさは、”入浴”に困っている人がそれほどまでに多いことの反映でした。この方たちに入浴の楽しさを取り戻してほしい。もっと多くの人に「ラクに、安全にお風呂に入る」気持ちよさを味わってほしい。その遥かな目標に向かって、今日も「座シャワー」は進歩を続けています。
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